論文
- 運動や筋トレを頑張っているのに、なかなか痩せないのはなぜか?
- 運動や筋トレは実際どれぐらいのダイエット効果があるの?
- 運動と食事管理だったら、どっちがダイエットに効果的?
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「ダイエットのために運動をはじめたけど、なかなか体重が落ちない」
あなたもこのような経験があるのではないでしょうか?
それもそのはずで、じつは運動や筋トレ「だけ」で、そう簡単に体重は落ちません。
ですが、日々ダイエットの相談をうける私の実感として、「運動をがんばれば絶対に痩せる」と過度な期待をしている方は多いです。なので、運動で痩せないことに悩んだり、逆に運動をがんばっていない自分を責めたりしてしまいがちです。
もちろん、運動や筋トレはとても大切です。しかし、そのダイエット効果を正しく理解したうえで取り組まなければ、努力が空回りしてしまいます。
この記事では、運動や筋トレで痩せない理由を、数値(カロリー)や科学論文にもとづいて、詳しく解説しました。
間違った知識や思い込みでダイエットに悩まないように、この記事がお役にたてばうれしいです。
運動・筋トレだけでは痩せない3つの理由
体脂肪を1kg落とすには7,200kcalが必要
まずはじめに、痩せるために必要なカロリー量を確認しておきましょう。
結論からお伝えすると、体脂肪1kgを落とすのに約7,200kcalが必要になります。
計算は次のとおりです。
- 脂肪1gは9kcal
- 9kal × 脂肪1kg(1,000g) = 9,000kcal
- ただし、ヒトの脂肪は20%が水分、80%が脂質
- なので、9,000kcal × 80% = 7,200kcal
(参考:厚生労働省 e-ヘルスネット エネルギー代謝の評価方)
これを1ヶ月(30日)で割ると、こうなります。
- 7,200kcal ÷ 1ヶ月(30日)= 240kcal
つまり、毎日240kcalを消費すれば、1ヶ月で体脂肪−1kgということです。
理由1:有酸素運動の消費カロリーはそこまで大きくない
「やせたかったら有酸素運動をしなさい」とよく言われます。なぜなら、有酸素運動は体脂肪をエネルギーとして燃やしてくれるからです。
しかし、週に1~2回有酸素運動をがんばったからといって、そう簡単に体脂肪は燃えません。
有酸素運動とは、軽度~中程度の負荷で、長い時間をかけて行う運動のことです。
- ウォーキング
- ジョギング
- サイクリング
- 水泳 など
これに対して、高負荷で短い時間の運動を、無酸素運動と言います。
- 短距離走
- 筋トレ など
では、有酸素運動でどれぐらいのカロリーを消費できるのでしょうか?
240kcalを消費する運動は、たとえば次のとおりです。
- ウォーキング 約60分
- ジョギング 約30分
- 水泳(クロール) 約30分
ジョギングで考えると、毎日30分がんばれば、1ヶ月で体脂肪−1kgですね。
ただし、1つ注意点があります。それは、有酸素運動では、運動の前半は糖質がエネルギーとして使われ、後半から脂質がエネルギーとして使われる、ということです。体脂肪というのは、カラダが飢餓に備えて、大事に溜めているエネルギーなので、すぐには使われないんですね。
(参考:厚生労働省 e-ヘルスネット エアロビクス/有酸素運動)
なので、ジョギング30分で消費する「脂質」のカロリーは、だいたい半分の約120kcalです。
- ジョギング30分で約240kcal = 糖質で約120kcal + 脂質で約120kcal
(※有酸素運動で体脂肪が燃えはじめるのは、運動20分後からと言われています。ここでは話をわかりやすくするために、前半は糖質、後半は脂質、と考えています。)
つまり、ジョギングを毎日30分がんばっても、1ヶ月で体脂肪は0.5kg(500g)しか落ちないという計算です。
このことは、研究論文でも報告があります。
論文
実際、ヘルシンキ大学の研究者たちは2000年に、運動についての総合的な調査をもとに、
- 効果的に体重を減らすためには、1週間に1,500〜2,000kcalを消費する運動が必要
と報告しています。(根拠論文:Does physical activity prevent weight gain–a systematic review)
これはジョギングに換算すると約3〜4時間の運動量です。
ジョギング経験者ならすぐにわかりますが、ジョギングは30分でもなかなかキツイ運動です。忙しい現代人で、ジョギング30分を毎日の習慣にできる人は、ほとんどいないでしょう。
このように、有酸素運動の消費カロリー「だけ」で痩せるのは現実的にむずかしいといえます。
また、次のような研究論文の報告もあります。
論文
2013年のコロラド大学による研究論文では、これまでに報告された「数多くの運動についての研究論文」を総合的に調査したうえで、次のように結論づけています。
- 多くの運動プログラムによる体重減少の効果は、平均すると中程度。ときには、期待していたよりも体重が減らないこともある。
- 運動による効果には個人差があり、体重を落とせる人もいるが、体重が変わらない人もいる。また、体重が増えてしまう人も少しはいる。
(根拠論文:Resistance to exercise-induced weight loss: compensatory behavioral adaptations)
理由2:筋トレで増える基礎代謝は少しだけ
「やせたかったら、筋肉をつけて、基礎代謝を上げなさい」これもトレーナーがよく言うアドバイスです。
まちがってはいないのですが、筋肉量が増えても、基礎代謝は少ししか増えてくれません。
基礎代謝とは、簡単にいえば、生きるために最低限必要で、カラダを動かさなくても消費するエネルギーのことです。1日にこれだけあります。
- 女性 約1,200kcal
- 男性 約1,500kcal
そして、基礎代謝全体のうち、筋肉の働きは18%程度です。内訳は次のとおりです。
- 肝臓 27%
- 脳 19%
- 筋肉 18%
- 腎臓 10%
- 心臓 7%
- その他 19%
(参考:Wikipedia Basal metabolic rate)
少し前まで、筋肉の基礎代謝は約40%と言われてのですが、現在は、そこまで大きくないことがわかっています。
たとえば成人女性だと、筋肉の基礎代謝は1日で約216kcalです。
- 基礎代謝 約1,200kcal × 筋肉の基礎代謝 18% = 約216kcal
それでは、筋トレで筋肉がさらに増えれば、どれだけ基礎代謝が増えるのでしょうか?
じつは、筋肉が1kg増えても、基礎代謝は約13kcalしか増えないことがわかっています。
ただし、筋肉がつくことで、内蔵の量や活動量が増えて、基礎代謝が約50kalまで増えるという説もありますが、まだ正確には確認されていません。
(参考:国立健康・栄養研究所 保健指導、食事、運動、エネルギー代謝に関するQ&A)
なお、筋肉を1kg増やすには、1年ぐらいの期間が必要と言われています(個人差があります)。
とはいえ、仮に50kcalだとしても、毎日積み上がれば、ダイエットにジワジワ効いてきます。また先ほど述べたように、いまある筋肉量をキープすることは大切です。
そういった意味で、筋トレはできればやるべきです。しかし、筋トレの消費カロリー「だけ」で痩せようとするのはムリがある、ということは理解しておきましょう。
理由3:運動すると食欲が増える
運動には見落とされがちな罠があります。それは、運動をするとお腹が空くということです。運動をがんばった満足感や安心感から、自分へのご褒美としてついつい食べてしまいます。
ここで問題なのは、私たちは運動の消費カロリーを大きく見積って、ご褒美として食べる摂取カロリーを低く見積もってしまいがち、ということです。複数の研究論文で報告があります。(根拠論文:Just thinking about exercise makes me serve more food. Physical activity and calorie compensation)
(根拠論文:Alterations in energy balance from an exercise intervention with ad libitum food intake)
繰り返しですが、毎日240kcal消費すれば、1ヶ月で体脂肪−1kgです。
240kcalぐらいの食品は、たとえば次のとおりです。
- 白米 茶碗1杯(150g):252kcal
- アンパン 1個(280g):280kcal
- 缶ビール ロング(500ml) 1本:約200kcal など
実際、個人差はあるものの、運動をすると摂取カロリーも増えてしまう人がいることが、複数の研究論文で報告されています。(根拠論文:Appetite control and energy balance: impact of exercise)
(根拠論文:Acute and long-term effects of exercise on appetite control: is there any benefit for weight control?)
(根拠論文:Effects of exercise and restrained eating behaviour on appetite control)
このように、運動していると、無意識に食事の量が増えることがあるので、注意が必要です。
ダイエットには、運動よりも食事のほうが効果は大きい
ここまで、有酸素運動と筋トレの消費カロリーが「そこまで高くない」ことをみてきました。
では、どうすれば痩せられるのかというと、まずは食事を改善することが大切です。そのうえで、運動はプラスアルファでやるのがもっとも効果的といえます。
論文
2014年にウィーン大学の研究者たちは、食事管理と運動のダイエット効果について、21個の研究論文を総合的に調査しました。研究の対象者は合計で3,521名で、1年以上にわたって追跡調査されたものです。
結果は、運動よりも食事管理の方が平均2.93kgも多くの体重が減ったことが確認されました。
さらに、食事管理のみと食事管理+運動を比べると、運動+食事管理の方が平均1.38kg多く体重が減ったことが確認されました。
プロレスラーや相撲取りを考えてみると、食事の重要性がイメージしやすいかもしれません。
彼らは、普段から厳しいトレーニングをするので、毎日たくさんのカロリーを消費します。筋肉量も多い。それでも、彼らは太っています。なぜかと言うと、わざと太る食べ方をしているからです。
ここで大事なのは、どれだけ運動したり筋トレで筋肉をつけても、食べ方次第で太れるということ。食事の影響力はそれだけ大きいということです。
そして、これは逆のことも言えます。食べ方次第で痩せられるということです。
ダイエットのための食事については、次の記事を参考にしてみてください。
ダイエットにおすすめの運動
運動するなら「日常生活の運動」と「筋トレ」
正しい食事をすることは前提で、できれば運動もやるべきです。
運動の消費カロリーも、長く継続できれば確実にダイエットにつながります。また、運動には健康になる、ストレスに強くなるといった効果も期待できます。
どのような運動が良いかというと、上から順に次の運動がおすすめです。
- 日常生活の運動を増やす
- 筋トレ
- 有酸素運動(余裕があれば)
日常生活の運動を増やす
まずは日常生活のなかで運動を増やしましょう。たとえば、次のような運動です。
- 歩けるときは歩く
- なるべく階段を使う
- 休日はなるべく出かける
「たかがこんなことか」と思われたかもしれませんが、とても大切です。
なぜかというと、日常生活の運動は、毎日長く続けやすいからです。ジムに行くような手間もかかりません。1回の消費カロリーは小さくても、毎日積み重ねた効果は無視できません。ボディブローのようにジワジワとダイエットに効いてきます。
また、歩くや階段を使うだけでも、足やお尻の筋肉量はそれなりにキープできます。
ポイントは、1年、2年と長く続ける意識でやることです。
筋トレ
余裕があれば、ぜひ筋トレもやりましょう。
基礎代謝の18%は筋肉なので、今ある筋肉量をキープすることは大切です。
また、筋肉で増える基礎代謝は少しだけとはいえ、カラダを動かさなくてもカロリーが少しづつ消費されていく効果は無視できません。
さらに、筋肉が引き締まることでカラダのラインが細く見える、という効果も期待できます。ヒップアップもします。
ポイントは、「胸・背中・お尻・太もも」などの大きな筋肉を鍛えることです。できれば、ジムにいってウエイトを使って負荷をかけるると効率がよいです。もちろん家で自重でもOKです。
また、筋トレはダイエット以外の部分でメリットが多いです。
- 疲れにくくなる
- 気分がスッキリする
- 頭の回転が早くなる
ぜひ、生活習慣に取り入れるべきです。
有酸素運動(余裕があれば)
同じ時間を使うのであれば、まずは筋トレを優先させるべきです。
そのうえで、余裕があったり、もっと運動をしたいのであれば、ぜひ有酸素運動を行いましょう。
ただし、運動が苦手でストレスになるなら、無理にやる必要はありません。運動は、楽しんで長く継続することが一番大切です。
まとめ
- 有酸素運動や筋トレの消費カロリー「だけ」でやせるのはむずかしい
- 運動をするとお腹が空く
- ダイエットは運動よりも食事
- 正しい食事をしたうえで、運動は「日常生活の運動・筋トレ」がおすすめ
繰り返しですが、運動は大切です。やらないよりは絶対にやるべきです。ただし、ダイエットのためには「まずは食事」です。そのうえで運動をやるのがベスト、と考えましょう。
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