「ダイエットに効果的なPFC(三大栄養素)バランスはどんな割合?」
「PFCはそれぞれ、どんなふうにダイエットに影響するの?」
「私の目標体重に合わせたPFCバランスは、どうやって計算したらいい?」
「ダイエットの成否はPFC(3大栄養素)で決まる」といっても、けっして大げさではありません。
なぜなら、ダイエットの成功は「摂取カロリーと消費カロリーのバランス」で決まり、摂取カロリーはPFCを「どれだけ食べるか」で決まるからです。
また、後ほどご説明するように、PFCはそれぞれ違った働きをして、ダイエットに「良くも悪く」も影響します。なので、PFCを「どのようなバランスで食べるか」はきわめて重要です。
筆者がトレーナーとしてダイエットの相談を受けてきた経験上、ダイエットにお悩みの方は「PFC(3大栄養素)バランスの崩れた食事」をしていることがほとんどです。
この記事では、「ダイエットに理想のPFCバランス」と「その計算方法」について詳しく解説しました。「あなたの目標体重に合わせたPFCバランスの計算」ができるようになります。
PFCバランスを改善するだけで、かなり痩せやすくなるはずです。ぜひ、この記事を参考にしてみてください。
せいじ
NSCA認定パーソナルトレーナー(国際資格)/ダイエットまっぷ運営・執筆者/オンラインダイエット指導 BeShape 代表/健康運動実践指導者/学生時代にスポーツ医科学を専攻し、有名実業団チームのトレーナーとして経験を積む。その後、留学などを経て独立/大阪生まれの30代/趣味は読書と旅行
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PFCバランスとは?
PFCバランスとは、3大栄養素のバランスのことです。
私たちの食べるものは5大栄養素にわけられます。
- たんぱく質
- 脂質
- 炭水化物(糖質)
- ビタミン
- ミネラル
このうち、たんぱく質・脂質・炭水化物(糖質)の3つは、「カラダの材料」や「エネルギー」になるので、3大栄養素と呼ばれます。
3大栄養素は英語で、たんぱく質=Protein、脂質=Fat、炭水化物(糖質)=Carbohydrateなので、それぞれの頭文字をとってPFCといいます。
ダイエットを成功させるには、PFCを「どれだけ」「どのようなバランス」で食べるかが、きわめて重要になります。
ダイエットに理想のPFCバランス
結論からお伝えすると、「厚生労働省が定めるPFCバランス」がダイエットに理想的といえます。
厚生労働省は、生活習慣病(肥満など)の予防を目的として、豊富な実証研究にもとづき、「日本人の食事摂取基準」を定めています。そのなかで、PFCそれぞれの摂取量が定められています。
それぞれ解説していきます。
たんぱく質は13~20%
たんぱく質の目標量は「摂取カロリーに対して13〜20%」です。
詳しくは、次のように定められています。
男性 | |||
年齢 | 必要量 | 推奨量 | 目標量(カロリー比) |
1~2歳 | 15g | 20g | 13~20% |
3~5歳 | 20g | 25g | |
6~7歳 | 25g | 30g | |
8~9歳 | 30g | 40g | |
10~11歳 | 40g | 45g | |
12~14歳 | 50g | 60g | |
15~17歳 | 65g | ||
18~29歳 | |||
30~49歳 | |||
50~64歳 | 14~20% | ||
65~74歳 | 60g | 15~20% | |
75歳以上 |
女性 | |||
年齢 | 必要量 | 推奨量 | 目標量(カロリー比) |
1~2歳 | 15g | 20g | 13~20% |
3~5歳 | 20g | 25g | |
6~7歳 | 25g | 30g | |
8~9歳 | 30g | 40g | |
10~11歳 | 40g | 50g | |
12~14歳 | 45g | 55g | |
15~17歳 | |||
18~29歳 | 40g | 50g | |
30~49歳 | |||
50~64歳 | 14~20% | ||
65~74歳 | 15~20% | ||
75歳以上 |
(参考:厚生労働省 日本人の食事摂取基準)
たんぱく質は、カラダの材料となり、不可欠な栄養素です。なので、最低限とるべき量として「必要量」が定められています。また、通常とるべき量として「推奨量」も定められています。
たんぱく質を十分に食べることが、ダイエットに効果的なのは、多くの研究によって確認されています。(根拠論文:A high-protein diet for reducing body fat: mechanisms and possible caveats)
たんぱく質がダイエットに効果的な理由は、次のとおりです。
- 筋肉の材料になって基礎代謝をキープできる
- 食欲が満たされて、余計なカロリー摂取が減る
- たんぱく質を消化するときの食事誘発性熱産生によって消費カロリーが増える
ですが、ダイエットにお悩みの方は、「推奨量」にも足りていないことが多いです。
まずは、目標量の下限である13%を目指してしっかり食べましょう。そのうえで、20%までの範囲で調整していきます。
ただし一方で、たんぱく質は取りすぎてもダイエット効果は高まらないことも、研究によって示されています。(根拠論文:Long-term effects of low-fat diets either low or high in protein on cardiovascular and metabolic risk factors: a systematic review and meta-analysis)
なので、上限の20%を超えて食べる必要はありません。
より詳しい、たんぱく質のとり方はこちらの記事を参考にしてみてください。
脂質は20~30%
脂質の目標量は「摂取カロリーに対して20~30%」です。
詳しくは、次のように定められています。
男性 | ||||
年齢 | 目標量(カロリー比) | 飽和脂肪酸(目標量) | オメガ6系脂肪酸(目安量) | オメガ3系脂肪酸(目安量) |
1~2歳 | 20~30% | 10%以下 | 4g | 0.7g |
3~5歳 | 6g | 1.1g | ||
6~7歳 | 8g | 1.5g | ||
8~9歳 | ||||
10~11歳 | 10g | 1.6g | ||
12~14歳 | 11g | 1.9g | ||
15~17歳 | 8%以下 | 13g | 2.1g | |
18~29歳 | 7%以下 | 11g | 2g | |
30~49歳 | 10g | |||
50~64歳 | 2.2g | |||
65~74歳 | 9g | |||
75歳以上 | 8g | 2.1g |
女性 | ||||
年齢 | 目標量 | 飽和脂肪酸(目標量) | オメガ6系脂肪酸(目安量) | オメガ3系脂肪酸(目安量) |
1~2歳 | 20~30% | 10%以下 | 4g | 0.8g |
3~5歳 | 6g | 1g | ||
6~7歳 | 7g | 1.3g | ||
8~9歳 | ||||
10~11歳 | 8g | 1.6g | ||
12~14歳 | 9g | |||
15~17歳 | 8%以下 | |||
18~29歳 | 7%以下 | 8g | ||
30~49歳 | ||||
50~64歳 | 1.9g | |||
65~74歳 | 2g | |||
75歳以上 | 7g | 1.8g |
(参考:厚生労働省 日本人の食事摂取基準)
脂質は、種類ごとにも摂取量が定められています。
飽和脂肪酸は、「主に動物の肉」に含まれます。食べすぎは生活習慣病のリスクを上げるので、目標量の上限が定められています。
また、オメガ6系脂肪酸は「主にサラダ油」に、オメガ3系脂肪酸は「主に青魚」に含まれます。この2つのバランスが崩れると、生活習慣病のリスクを上げるので、それぞれ目安量が定められています。現代の日本人は、オメガ6系脂肪酸をとりすぎて、オメガ3系脂肪酸が足りていないことが多いです。
脂質は太るといわれることがありますが、それは正しくありません。正確にいえば、脂質には「良質な脂質」と「悪い脂質」があって、悪い脂質は太りやすいです。(根拠論文:Dietary fat and weight gain among women in the Nurses’ Health Study)
一方で、良質な脂質は、カラダに不可欠であり、ダイエットに効果的です。(根拠論文1、根拠論文2)
なので、悪い脂質はなるべく減らしながら、良質な脂質を20~30%の範囲内でとるべきです。
なお、脂質の摂取量を20%以下にするような脂質制限はおすすめしません。
実際、2015年のハーバード大学による大規模な研究では、「低脂質ダイエットは、他のダイエット方法と比べて、長期的に体重減少に効果的とは言えない」と結論づけられています。(根拠論文:Effect of low-fat diet interventions versus other diet interventions on long-term weight change in adults: a systematic review and meta-analysis)
低脂質がダイエットに効果的ではない理由は、次のとおりです。
- 低脂質は食欲が満たされにくい
- 脂質が足りない分、精製・加工された糖質の摂取量が増えやすい(=太りやすい)
より詳しい脂質のとり方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
炭水化物(糖質)は50~65%
炭水化物(糖質)の目標量は「摂取カロリーに対して50~65%」です。
詳しくは、次のように定められています。
性別 | 男性 | 女性 |
年齢 | 目標量(カロリー比) | 目標量(カロリー比) |
1~2歳 | 50~65% | 50~65% |
3~5歳 | ||
6~7歳 | ||
8~9歳 | ||
10~11歳 | ||
12~14歳 | ||
15~17歳 | ||
18~29歳 | ||
30~49歳 | ||
50~64歳 | ||
75歳以上 |
(参考:厚生労働省 日本人の食事摂取基準)
炭水化物(糖質)は、カラダの主要なエネルギー源なので、摂取カロリーの半分以上が推奨されています。
炭水化物(糖質)は、ダイエットでは悪者にされやすく、糖質制限ダイエットが注目されています。
実証研究によれば、たしかに、糖質制限をすると短期的に体重は落ちます(根拠論文)。しかし、長期的にみれば、そもそも継続が難しかったり(根拠論文)、糖質制限をやり過ぎたり、やり方を間違えば、健康面でのデメリットがあります(根拠論文1、根拠論文2、根拠論文3)。
炭水化物(糖質)はカラダに不可欠な栄養素です。やみくもに制限するべきではありません。
糖質制限をしなくても、「総摂取カロリー」と「炭水化物(糖質)の質」に気をつければ、体重は落とせます。(根拠論文1、根拠論文2)。むしろ、長い目でみれば、炭水化物(糖質)を十分に食べる方が長続きするので、ダイエットがうまくいきやすいといえます。
たんぱく質と良質な脂質はしっかりとるべきなので、炭水化物(糖質)は摂取カロリーの50%を目安に食べるとよいでしょう。
なお、「ゆるい糖質制限」なら検討してみるのはアリです。
ゆるい糖質制限であれば、継続しやすいです。また、糖質制限のやり過ぎによるデメリットも避けることができます。(ただし、炭水化物(糖質)を減らした分、良質なたんぱく質と脂質を食べるのことが前提です。)
ゆるい糖質制限の場合は、摂取カロリーに対して40~50%を目安にしましょう。
炭水化物(糖質)のより詳しいとり方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
ダイエットに理想のPFCバランス(カロリー比)
- たんぱく質 13~20%:まずは13%を目標に。そのうえで20%までの範囲で調整
- 脂質 20~30%:悪い脂質を減らして、良質な脂質で20~30%を目標に
- 炭水化物(糖質) 50~65%:良質な炭水化物(糖質)で50~55%を目安に
PFCバランスの計算方法
それでは、PFCバランスの計算方法を見ていきます。
次の3ステップです。
- 1日のエネルギー必要量(kcal)/日を計算する
- PFCそれぞれのカロリー量(kcal)を計算する
- PFCそれぞれのカロリー量(kcal)をグラム(g)に換算する
順に解説していきます。
1日のエネルギー必要量(kcal)/日を計算する
まずは、あなたが1日に必要なエネルギー量を計算します。
厚生労働省は次のような「推定エネルギー必要量」を公表しており、大まかな数値を推定することができます。
あなたに当てはまる数値を確認したら、体重をかけ算します。
体重1kgあたりの推定エネルギー必要量 | ||||||
男性 | 女性 | |||||
身体活動レベル | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ |
18~29歳 | 35.5 kcal | 41.5 kcal | 47.4 kcal | 33.2 kcal | 38.7 kcal | 44.2 kcal |
30~49歳 | 33.7 kcal | 39.3 kcal | 44.9 kcal | 32.9 kcal | 38.4 kcal | 43.9 kcal |
50~64歳 | 32.7 kcal | 38.2 kcal | 43.6 kcal | 31.1 kcal | 36.2 kcal | 41.4 kcal |
65~74歳 | 31.3 kcal | 36.7 kcal | 42.1 kcal | 30 kcal | 35.2 kcal | 40.4 kcal |
75歳以上 | 30.1 kcal | 35.5 kcal | ー | 29 kcal | 34.2 kcal | ー |
身体活動レベル | |
Ⅰ(低い) | 生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合 |
Ⅱ(ふつう) | 座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、通勤・買い物での歩行、家事、軽いスポーツ、のいずれかを含む場合 |
Ⅲ(高い) | 移動や立位の多い仕事の従事者、あるいは、スポーツ等余暇における活発な運動習慣を持っている場合 |
(参考:厚生労働省 日本人の食事摂取基準)
たとえば、A子さんのケースで計算してみます。
- 女性
- デスクワークが中心のOL(身体活動レベルは低い)
- 35歳
- 現在の体重 60kg
- 目標体重 55kg
A子さんの場合、体重1kgあたりの推定エネルギー必要量は32.9kcalです。これに目標体重55kgを掛けて、1日エネルギー必要量は1,810kcalと計算できます。
体重1kgあたりの推定エネルギー必要量 32.9kcal × 目標体重 55kg = 1,810kcal
体重を落としたい方は「目標体重」を、今の体型をキープしたい方は「現在の体重」を使って、推定エネルギーを計算します。
目標(理想)体重の計算方法については、こちらの記事を参考にしてださい。
PFCそれぞれのカロリー量(kcal)を計算する
次に1日のエネルギー必要量(kcal)を、PFCに振り分けていきます。
ここでは、次のPFCバランス(厚生労働省)で計算します。
- たんぱく質 13~20%
- 脂質 20~30%
- 炭水化物(糖質) 50~65%
A子さんの場合は、次のとおりです。
- たんぱく質 1,810kcal × 13~20% = 235~362kcal
- 脂質 1,810kcal × 20~30% = 362~543kcal
- 炭水化物(糖質) 1,810kcal × 50~65% = 905~1,177kcal
これで、PFCのカロリー量(kcal)が計算できました。
PFCそれぞれのカロリー量(kcal)をグラム(g)に換算する
最後に、PFCのカロリー量(kcal)をグラム(g)に換算します。
PFCそれぞれの「1gあたりカロリー量」は次のとおりです。
- たんぱく質 4kcal / g
- 脂質 9kcal / g
- 炭水化物(糖質) 4kcal / g
(*食品によってこれらの数値は少し変動します)
A子さんの場合で計算すると、次のとおりです。
- たんぱく質 235~362kcal ÷ 4kcal = 59~91g(1食あたり20~30g)
- 脂質 362~543kcal ÷ 9kcal = 40~60g(1食あたり13~20g)
- 炭水化物(糖質) 905~1,177kcal ÷ 4kcal = 226~294g(1食あたり75~98g)
これでPFCバランスの計算は完了です!
あとは、この量を参考にして食事を改善していきます。
注意
PFCバランスの計算結果は、あくまでも「推定」です。計算結果は「大まかな目安」と考えましょう。
実際には、長期的な体重の増減を見ながら、「自分に合った最適なエネルギー必要量とPFCバランス」を見つけていくことが大切です。
過度な食事制限はリバウンドする
エネルギー必要量を大きく下回るような食事制限は避けるようにしましょう。
摂取カロリーを制限しすぎると、カラダはエネルギーを温存するために代謝を下げて、消費カロリーが下がるので、よけいに痩せにくくなる恐れがあります。これはリバウンドにつながります。(根拠論文)
摂取カロリーを減らして体重を落としていく場合は、「ゆるやかに摂取カロリーを減らして、適度な運動で消費カロリーを増やして」長期的に体重を落としていくのがリバウンドしないコツです。
詳しくはこちらの記事を参考にしてみてください。
食事の質を高めることもダイエットには不可欠
PFCバランスが適切だからといって、何を食べてもダイエットできるわけではありません。
PFCバランスと同じぐらい、PFCを何から食べるか、つまり「食事の質」もダイエットの成功には不可欠です。
たとえば、極端な例ですが、砂糖と玄米は同じ炭水化物(糖質)です。しかし、砂糖は太りやすく、玄米は太りにくいです。
たんぱく質と脂質も同じように、何から食べるかで、ダイエットへの効果は大きく変わります。
PFCをそれぞれ何から食べるかは、次の記事を参考にしてみてください。
まとめ
- ダイエットに効果的なPFCバランス
- たんぱく質 13~20%:まずは13%を目標に。それから20%の範囲で調整
- 脂質 20~30%:悪い脂質を減らして、良質な脂質で20~30%を目標に
- 炭水化物(糖質) 50~65%:良質な炭水化物(糖質)で50~55%を目安に
正しいPFCバランスで食べれば、ダイエットの成功確率はグンと高まります。あなたの食事のPFCバランスを、ぜひ見直してみてください。
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