「糖質なしの生活はツラい。。リバウンドせずに糖質制限をやめるにはどうすればいい?」
「糖質制限しても、なぜか体重が落ちない。糖質とった方がいいのかな?」
「糖質制限は挫折した。糖質制限なしでも痩せる食事方法を教えてほしい」
せいじ
NSCA認定パーソナルトレーナー(国際資格)/ダイエットまっぷ運営・執筆者/オンラインダイエット指導 BeShape 代表/健康運動実践指導者/学生時代にスポーツ医科学を専攻し、有名実業団チームのトレーナーとして経験を積む。その後、留学などを経て独立/大阪生まれの30代/趣味は読書と旅行
オンラインダイエット指導の相談はこちらから
「糖質制限をはじめてみたけど、糖質なしの生活を続けるのはやっぱりしんどい!」
「でも、糖質制限を止めるのはリバウンドが怖い。。」
こんな話はよく聞きますが、糖質を食べながら、ダイエットをすることはできないのでしょうか?
結論からお伝えすると「可能」です。
筆者自身もそうですし、筆者がダイエット指導をしたクライアントの皆さんも、炭水化物(糖質)を食べながらダイエットに成功されています。
この記事では、糖質制限ダイエットの「やめ方」を3ステップにわけて解説しました。リバウンドせずに糖質制限をやめる方法が理解できて、ステップどおりにやれば、だれにでも実践してもらえる内容になっています。
そもそも、炭水化物(糖質)はカラダに必須の栄養素です。炭水化物(糖質)を食べながら、「標準体型、または、痩せ体型」を維持するのは、人間のカラダにとってごく自然なことです。
この記事を読んで、炭水化物(糖質)を怖がる生活から抜け出してもらえたらうれしいです。
糖質を食べながらでもダイエットはできる
まずはじめに、「糖質を食べてもダイエットができる理由」を見ていきます。
理由は大きく2つです。
- 炭水化物(糖質)で太るかどうかは総カロリーの問題
- 炭水化物(糖質)は制限するよりも「質」が大切
炭水化物(糖質)で太るかどうかは総カロリーの問題
ダイエットというのは、長い目でみれば、摂取カロリーと消費カロリーのバランスの問題です。
摂取カロリーよりも消費カロリーが大きければ(摂取カロリー < 消費カロリー)、糖質制限だろうと、脂質制限だろうと、どちらでも痩せます。
その証拠に、次のような実証研究があります。
2018年スタンフォード大学の研究チームでは、609名の太っている成人(18~50歳)を対象に、「炭水化物(糖質)制限」と「脂質制限」の2グループにわけて、1年間の体重変化を調べました。
結果は次のとおりです。
- 炭水化物(糖質)制限グループ:平均−6kg
- 脂質制限グループ:平均−5.3kg
両グループとも体重は減り、大きな差は見られませんでした。
この研究結果が明確に示すように、炭水化物(糖質)は食べても食べなくても、全体の摂取カロリーが減れば、体重は落ちるということです。
逆にいえば、糖質制限をしても痩せない人は、総カロリーが減っていない可能性が高いということです。
炭水化物(糖質)は制限するよりも「質」が大切
同じ炭水化物(糖質)でも、何から食べるかによって、太りやすさは変わります。
極端にいえば、「砂糖」も「玄米」も同じ糖質です。でも、同じ量を食べたとして、砂糖は太りやすいですし、玄米は太りにくいです。
その理由に「血糖値」と「インスリン」があります。
炭水化物(糖質)で太るメカニズムは、次のとおりです。
<糖質で太るメカニズム>
糖質のとりすぎ → 血糖値が急に上がる → 血糖(ブドウ糖)をカラダに取り込むためにインスリンが分泌 → 血糖値が下がる → 余った血糖(ブドウ糖)は体脂肪になる
(参考:厚生労働省 e-ヘルスネット インスリン)
このように、糖質が「血糖値」が急激に上げることでインスリンが多く分泌され、インスリンの働きによって体脂肪が増えやすくなります。(なので、インスリンは別名で「肥満ホルモン」と呼ばれることがあります)
ここで重要なのは、炭水化物(糖質)には、血糖値を「上げやすいもの」と「上げにくいもの」があるということです。
つまり、血糖値を上げにくい炭水化物(糖質)を食べれば、太りにくいということです。
ちなみに、糖質による「血糖値の上がりやすさ」は「GI値・GL値」であらわされます。「GI値が低いと、血糖値は上がりにくい」です。
たとえば、「砂糖(お菓子、ジュースなど)、白い炭水化物(パン、うどん、パスタなど)」などの加工された炭水化物(糖質)はGI値・GL値が高いです。なぜかというと、加工された炭水化物(糖質)は体内で吸収されやすく、血糖値を上げやすいからです。
一方で、「茶色い炭水化物(玄米、全粒粉パンなど)、イモ類(ポテトは除く)、果物」などの加工が少ない炭水化物(糖質)はGI値・GL値が低いです。なぜかというと、加工が少ないので、食物繊維などを豊富に含み、体内でゆっくり消化され、血糖値を上げにくいからです。
つまり、GI値・GL値が低い糖質(炭水化物)を食べれば、糖質制限をしなくても、ダイエットができるということです。
実際、世界各国の糖尿病学会(米国、カナダ、イギリスなど)は、「GI値の低い炭水化物(糖質)を食べることを推奨」しています。(糖尿病は肥満と強い関係性があります)
また、次のような実証研究もあります。
2011年ハーバード大学などによる研究では、「ライフスタイルと体重増加」について、120,877名の米国人を対象に、10〜20年を追いかけて調べました。結果は次のとおりです。
- 「砂糖の多いジュース、精製された穀物(白い炭水化物)、ポテトチップス、じゃがいも」を日常的に食べることは、体重増加と強い関係がみられた
- 一方で、「野菜、茶色い炭水化物、果物、ナッツ、ヨーグルト」を日常的に食べることは、体重減少と関係がみられた
(根拠論文:Changes in diet and lifestyle and long-term weight gain in women and men)
2010年コペンハーゲン大学による、773名のヨーロッパ人を対象にした実証研究では、「低GI値の食事は、減量後の体重維持に有効」であることが確認されました。
(根拠論文:Diets with high or low protein content and glycemic index for weight-loss maintenance)
これらの研究結果が示すように、炭水化物(糖質)は「質(何から食べるか)」が大切ということです。
糖質制限にはデメリットがある
糖質制限はたしかに短期的には体重が落ちます。しかし、総合的に見れば、メリットばかりではありません。
糖質制限には次のようなデメリットがあります。
- 長期的にダイエット効果が低い可能性
- やり方を間違えばカラダに良くない
- 糖質を制限しすぎると副作用がある
それぞれ解説していきます。
糖質制限ダイエットは長期的に効果が低い可能性
糖質制限ダイエットは、長期的なダイエット効果が低い可能性を示す実証研究があります。
次の論文は、糖質制限では有名なものの1つです。
2003年テンプル大学の研究者による研究で、世界5大医学雑誌の『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』で報告されました。
この研究では、63名の肥満の男女を、次の2つのグループにわけて、1年後の体重を観察しました。
- 低炭水化物(糖質):高たんぱく質、高脂質
- 高炭水化物(糖質):カロリー制限、低脂質
結果は、6ヶ月後では低炭水化物(糖質)グループでは約−7kgに対して、高炭水化物(糖質)グループでは約−3.2kgでした。低炭水化物(糖質)に大きな効果が見られました。
しかし、1年後には両グループで体重減に大きな差は無くなっていました。また、それだけでなく、低炭水化物(糖質)グループは体重減が約−4.4kgと、6ヶ月後のときよりも体重が増えていました。
そしてもう1つ重要なのは、この実験に参加した人の約40%が1年間の低炭水化物(糖質)ダイエットを継続をできなかったという事実です。
(根拠論文:A randomized trial of a low-carbohydrate diet for obesity)
この研究結果が示すように、低炭水化物(糖質制限)ダイエットは、短期的には痩せるが、長期的にそこまで有効ではない可能性があります。また、そもそも継続が難しいということです。
糖質制限はやり方を間違えばカラダに良くない
糖質制限はやり方を間違えば、カラダに良くない可能性があります。仮に痩せたとしても、糖質制限を続けるかどうかは、よく考える必要があります。
次のような実証研究があります。
2018年に医学雑誌の『ランセット』で報告された有名な研究です。
低炭水化物ダイエットと死亡率の関係について、15,428名のアメリカ人(45〜64歳)を対象に、25年にわたって調査しました。
結果は、炭水化物の摂取量「だけ」を見ると、低炭水化物(総カロリーの40%以下)では死亡率の増加が確認されました。また、炭水化物のとりすぎ(総カロリーの70%以上)も死亡率の増加が確認されました。
ただし、低炭水化物のグループでは、炭水化物を減らした代わりに動物性の脂質・たんぱく質を増やした場合には死亡率の増加が見られました。一方で、植物性の脂質・たんぱく質を増やした場合は低い死亡率との関係が見られました。
(根拠論文:Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis)
このように、炭水化物(糖質)はとり過ぎも、減らしすぎもよくありません。また、低炭水化物ダイエット(糖質制限)は「減らした分だけ何を食べるか」が重要です。
同様の結果が見られた研究がもう1つあります。
2020年ハーバード大学大学による研究では、低炭水化物と低脂質の死亡率について、37,233名のアメリカ人(平均年齢49.7歳)を対象に、20年以上にわたって調査しました。
結果は次のとおりでした。
- 低炭水化物と低脂質はそれだけを見ても死亡率との関連はなかった
- 低炭水化物と低脂質をヘルシーなたんぱく質で置き換えた場合は死亡率の低下と関連があった
- 一方で、質の悪いたんぱく質で置き換えた場合は死亡率の増加と関連があった
(根拠論文:Association of Low-Carbohydrate and Low-Fat Diets With Mortality Among US Adults)
以上の研究結果からいえるのは、糖質制限をしながら、動物性の脂質やたんぱく質の摂取量が増えているのであれば、糖質制限を続けるのは見直すべきということです。
一方で、植物性のたんぱく質や脂質を増やす限りにおいては、ゆるい糖質制限(総カロリーの40%程度まで)はおこなってよいかもしれません。
また、2004年デンマークの糖質制限ダイエットに関する研究論文では、長期的な糖質制限ダイエットの心臓病への悪影響が疑われており、「その点が明らかにならない限り、糖質制限ダイエットは推奨されない」と述べられています。(根拠論文:Atkins and other low-carbohydrate diets: hoax or an effective tool for weight loss?)
長期的な健康への影響が明らかでない以上、糖質制限ダイエットを続けるのは止めておくの無難といえます。
糖質制限のやり過ぎには副作用がある
2014年カナダの「複数のダイエット論文」をまとめて調べた研究では、低炭水化物ダイエットの副作用として、便秘、頭痛、口臭、筋肉のけいれん(こむら返り)、脱力感などがあると報告されています。
(根拠論文:Comparison of weight loss among named diet programs in overweight and obese adults: a meta-analysis)
原因として、糖質が足りていないことに加えて、糖質を含む食事を減らすので、ビタミン・ミネラル・食物繊維が不足することなどが考えられます。
私も自分のカラダで実験したことがあります。最初は体調も良く、体重も落ちていったのですが、数週間経ったあたりから、こむら返り、頭痛、脱力感がありました。(*絶対に真似しないでください)
糖質制限のやめ方
それでは、糖質制限の「やめ方」をみていきましょう。
具体的には、次の3つのステップです。
- 炭水化物(糖質)の量を増やす
- 炭水化物(糖質)の質を上げる
- たんぱく質と脂質を減らす
それぞれ解説していきます。
ステップ1:炭水化物(糖質)の量を増やす
糖質制限をやめるので、あたりまえですが、まずは炭水化物(糖質)の「量」を増やします。
結論からお伝えすると、「摂取カロリーの50%」を目安に炭水化物(糖質)を増やします。
厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」では、生活習慣病の予防などを目的として、総摂取カロリーに対する三大栄養素のバランスを次のように定めています。(※18~49歳)
- 炭水化物(糖質):50~65%
- たんぱく質:13~20%
- 脂質:20~30%
(参考:厚生労働省 日本人の食事摂取基準)
糖質制限をしていれば、50%より少ない状態になっているはずです。なので、厚生労働省の基準の下限である50%を目安に炭水化物(糖質)を増やします。
仮に、総摂取カロリーを*1800kcalで計算すると、次のようになります。(*あまり運動をしない成人女性の目安)
〈計算〉
- 1,800kcal × 50% = 900kcal
- 炭水化物(糖質)は1gあたり4kcal
- なので、900kcal ÷ 4kcal = 225g(1食あたり75g)
炭水化物(糖質)の摂取量目安は1日225g(1食あたり75g)
お茶碗1杯のお米(糖質約55g)は食べても大丈夫ということです!
「1日の摂取カロリー(必要カロリー)」は、次の表から計算してみてください。(※あくまで推定値です)
あなたの「身体活動レベル」と「年齢」に当てはまる数値を確認したら、「目標体重」をかけ算します。
身体活動レベル
身体活動レベル | |
---|---|
Ⅰ(低い) | 生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合 |
Ⅱ(ふつう) | 座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、通勤・買い物での歩行、家事、軽いスポーツ、のいずれかを含む場合 |
Ⅲ(高い) | 移動や立位の多い仕事の従事者、あるいは、スポーツ等余暇における活発な運動習慣を持っている場合 |
体重1kgあたりの推定エネルギー必要量
男性/身体活動レベル | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ |
---|---|---|---|
18~29歳 | 35.5kcal | 41.5kcal | 47.4kcal |
30~49歳 | 33.7kcal | 39.3kcal | 44.9kcal |
50~64歳 | 32.7kcal | 38.2kcal | 43.6kcal |
65~74歳 | 31.3kcal | 36.7kcal | 42.1kcal |
75歳以上 | 30.1kcal | 35.5kcal | ー |
女性/身体活動レベル | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ |
---|---|---|---|
18~29歳 | 33.2kcal | 38.7kcal | 44.2kcal |
30~49歳 | 32.9kcal | 38.4kcal | 43.9kcal |
50~64歳 | 31.1kcal | 36.2kcal | 41.4kcal |
65~74歳 | 30.0kcal | 35.2kcal | 40.4kcal |
75歳以上 | 29.0kcal | 34.2kcal | ー |
たとえば、35歳の女性で、ほとんど運動はしない(身体活動レベルⅠ)、目標体重が55kgの方であれば、次のような計算になります。
〈計算〉
- 体重1kgあたりの推定エネルギー必要量 32.9kcal × 目標体重 55kg = 1,810kcal
ステップ2:炭水化物(糖質)の質を上げる
量が決まれば、次は炭水化物(糖質)の「質」を上げます。
上記でご説明したように、血糖値を上げにくい炭水化物(糖質)、つまりGI値・GL値が低い炭水化物(糖質)を食べましょう。
たとえば、次のような食品です。
- 茶色い炭水化物(玄米、全粒粉パンなど)
- イモ類(じゃがいも以外)
- 果物
- ヨーグルト(砂糖無添加)
一方で、次の食品は避けましょう。
- 砂糖(お菓子、ジュースなど)
なお、白米を含む「白い炭水化物」については、たしかに茶色い炭水化物に変えるのが望ましいですが、一方で、筆者のダイエット指導の経験上、量にさえ気をつければ、白い炭水化物を食べながらでもダイエットは十分に可能です。
とくに日本人にとって白米を食べない、というのはなかなか難しいです。普通に健康的な人であれば、そこまで白米を怖がる必要はありません。うんどやパスタも、カロリーさえコントロールすれば、たまに食べるぐらいなら太りはしません。
炭水化物(糖質)の食べ方については、こちらの記事も参考にしてみてください。
また、GI値の低い全粒粉パンでは「ベースブレッド」がおすすめです。美味しくて、食べごたえがあるので、ダイエットを楽にしてくれます。
ステップ3:たんぱく質と脂質を調整する
最後に、糖質を増やした分、たんぱく質と脂質の量を調整します。
繰り返しですが、厚生労働省が定める基準は次のとおりです。(※18~49歳)
- 炭水化物(糖質):50~65%
- たんぱく質:13~20%
- 脂質:20~30%
糖質制限をしていれば、たんぱく質と脂質は「この基準の上限近く、またはそれ以上」の摂取量になっているはずです。
糖質は50%を目安に食べますので、たんぱく質は20%、脂質は30%を目安に調整していきます。
また、たんぱく質と脂質の質にもこだわりましょう。大まかにいえば、植物性の食品(豆類など)・魚を中心にして、赤身肉や加工肉などの動物性は控えめにするのがよいです。
たんぱく質と脂質の食べ方は、こちらの記事を参考にしてください。
これで、糖質制限の「やめ方」は完了です!
ゆるい糖質制限を検討するのはアリ
糖質制限を止めたいが、どうしてもリバウンドが怖い方は、総摂取カロリーに対して40%を目安にする「ゆるい糖質制限」は検討して良いかもしれません。ただし、たんぱく質と脂質の質はかならず植物性・魚を中心に食べることが条件です。
「ゆるい糖質制限」であれば、糖質制限のデメリットは防ぎながら、体重減のメリットが受けられる可能性があります。
まとめ
- 炭水化物(糖質)は食べながらでもダイエットできる
- 糖質制限はたしかに体重は減るが、デメリットもある
- 糖質制限の「やめ方」は3ステップ
- ステップ1:炭水化物(糖質)の量を増やす
- ステップ2:炭水化物(糖質)の質を上げる
- ステップ3:たんぱく質と脂質を調整する
正しい食べ方をすれば、炭水化物(糖質)を食べながらでも、ダイエットは成功させられます。
炭水化物(糖質)はそもそもカラダに不可欠な栄養素です。必要以上に怖がらずに、無理のない健康的なダイエットをぜひ目指してください。
コメント