「なぜ、食物繊維はダイエットに効果的?」
「どんな食品に食物繊維は豊富?」
「ダイエットのための食物繊維の摂取量は?」
「食物繊維を抜きにダイエットの成功はありえない」
そう言っても大げさではありません。それぐらい、食物繊維はダイエットに不可欠です。
ですが、現代人は食物繊維が不足しがちです。とくに、ダイエットにお悩みの方は、食物繊維が不足しているケースが多いです。
この記事では、現役トレーナーである筆者が、食物繊維の「ダイエット効果」について詳しく解説しました。ダイエットのために食物繊維を「何から」「どれだけ」とればいいか、「なぜ」大切か、が理解できる内容になっています。
食物繊維の大きなメリットは、お腹が空きにくくなって、ダイエットが楽になることです。また、腸内環境を整えることでダイエットを助けてくれます。
ぜひ、食物繊維が持つパワーを知って、明日から食事に取りいれてみてください。
せいじ
NSCA認定パーソナルトレーナー(国際資格)/ダイエットまっぷ運営・執筆者/オンラインダイエット指導 BeShape 代表/健康運動実践指導者/学生時代にスポーツ医科学を専攻し、有名実業団チームのトレーナーとして経験を積む。その後、留学などを経て独立/大阪生まれの30代/趣味は読書と旅行
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食物繊維とは?
食物繊維とは、食べものに含まれており、ヒトの消化酵素では消化することのできない成分のことです
食物繊維は、野菜や果物、穀物(茶色)、豆類、きのこ、海藻などの「植物性食品」に含まれており、魚介類や肉などの動物性食品にはほとんど含まれていません。
また、食物繊維には、水に溶けやすい「水溶性の食物繊維」と水に溶けない「不溶性の食物繊維」の2種類があります。
後ほど解説しますが、ダイエットに効果的なのは「水溶性の食物繊維」です。「不溶性の食物繊維」は便秘の解消などに効果があります。
食物繊維は、カラダのなかでいろいろ役に立つ働きをするので、5大栄養素に加えて、「第6の栄養素」といわれることもあります。
(参考:厚生労働省 e-ヘルスネット 食物繊維の必要性と健康)
なぜ、食物繊維はダイエットに効果的なのか?
「食物繊維を抜きに、ダイエットの成功はありえない」そういっても過言ではありません。それぐらい、食物繊維はダイエットに大切です。
食物繊維のダイエット効果は多くの研究で実証されています。たとえば、次のような研究があります。
2012年のウェイクフォレスト大学医学部(米国)による研究では、1,114名の米国人(18〜81歳)を5年間にわたって調査しました。
結果は、「食物繊維(水溶性)の摂取を10g増やせば、内臓脂肪は3.7%低くなる」ことが確認されました。
また、「積極的に食物繊維(水溶性)を食べた人は、そうでない人と比べて、内臓脂肪が7.4%低く、皮下脂肪も3.6%低くなる」ことも確認されました。
(根拠論文:Lifestyle factors and 5-year abdominal fat accumulation in a minority cohort: the IRAS Family Study)
2012年のジョージアヘルスサイエンス大学(米国)による研究では、559名の若い米国人(14〜18歳)を対象に調査したところ、「食物繊維の摂取量が多ければ、内蔵脂肪が少ない」ことが確認されました。
(根拠論文:Adolescent fiber consumption is associated with visceral fat and inflammatory markers)
このように、食物繊維は痩せることがわかっています。
それでは、なぜ食物繊維はダイエットに効果的なのでしょうか?
理由は次の3つが考えられます。
- 食物繊維は食欲を満足させる
- 食物繊維は糖質の吸収をゆっくりにして、血糖値の上昇をおさえる
- 食物繊維は腸内細菌を増やして体脂肪を燃やし、炎症を防ぐ
それぞれ解説していきます。
食物繊維は食欲を満足させる
水溶性の食物繊維には、食欲を満足させる働きがあります。つまり、食物繊維をとれば空腹になりにくいので、余計なカロリー摂取が減って、痩せやすくなるといえます。
食物繊維は体内で消化されません。また、水溶性の食物繊維には粘着性があります(ネバネバしている)。このような特徴のため、食物繊維(水溶性)はゆっくり時間をかけて腸内を通るので、腹持ちを良くして、食欲を満たしてくれます。(根拠論文1、根拠論文2)
また、食物繊維(水溶性)は、ホルモンの働きを調整して、食欲を満足させることがわかっています。
いくつかの研究によれば、食物繊維(水溶性)は、「空腹になるホルモン(グレリンなど)の働きを弱める」ことが確認されています。(根拠論文1、根拠論文2)
また一方では、「満腹になるホルモン(コレシストキニン、GLP-1やペプチドYYなど)の働きを強める」ことも研究で示されています。(根拠論文1、根拠論文2)
このようなメカニズムで、食物繊維は食欲を満足させてくれます。
逆にいえば、食物繊維が不足すると「なかなか食欲が満たされない」ということです。
水溶性の食物繊維は糖質の吸収をゆっくりにする
食物繊維(水溶性)は、長く腸内に留まることで、他の栄養素の吸収スピードをゆっくりにする働きもあります。
とくに糖質の吸収がゆっくりになることは、ダイエットにきわめて大切です。
たとえば、糖質のなかでも砂糖や白い炭水化物は、食物繊維がとても少ないです。このような糖質は、体内ですぐに消化吸収されて、血糖値を急激に上げます。
血糖値が急激に上がると、インスリンというホルモンが分泌されます。インスリンには、余った糖を体脂肪に変える働きがあるので、太りやすくなります。(参考:厚生労働省 e-ヘルスネット インスリン)
一方で、果物や茶色い炭水化物(玄米など)は、食物繊維がとても豊富です。このような糖質は、食物繊維のおかげで消化吸収がゆっくりになり、血糖値の上がり方もゆるやかなので、太りにくいです。
実際、次のような実証研究があります。
2011年ハーバード大学などによる研究では、「ライフスタイルと体重増加」について、120,877名の米国人を対象に、10〜20年を追いかけて調べました。結果は次のとおりです。
- 「砂糖の多いジュース、精製された穀物(白い炭水化物)、ポテトチップス、じゃがいも」を日常的に食べることは、体重増加と強い関係がみられた
- 一方で、「野菜、茶色い炭水化物、果物、ナッツ、ヨーグルト」を日常的に食べることは、体重減少と関係がみられた
(根拠論文:Changes in diet and lifestyle and long-term weight gain in women and men)
また、血糖値が急激に上がると、そのあとは反動によって急激に下ります。血糖値が低くなると、カラダはエネルギーが足りてないと判断して、空腹感を感じます。するとまた、血糖値を上げやすい糖質を食べてしまい、悪循環にハマってしまいます。
この点でも、食物繊維(水溶性)は、糖質の吸収をゆるやかにして、血糖値を安定させることで、空腹をおさえるように働きます。(根拠論文:Fiber and prebiotics: mechanisms and health benefits)
水溶性の食物繊維は腸内細菌を増やす
腸内には、1,000種類、100兆個以上の腸内細菌がいることが知られています。(参考:厚生労働省 e-ヘルスネット 腸内細菌と健康)
じつは、「腸内細菌の種類の少なさ」と「太りやすさ」には関係性があることが、複数の研究によって示されています。
2013年科学雑誌『ネイチャー』に掲載された、フランス国立農学研究所による研究では、292名のデンマーク人(うち123名は肥満ではない、169名は肥満)の腸内環境を調べられました。
結果は、「腸内細菌の数と種類が少ない人たち(全体の23%)は、多い人たちと比べて、肥満やインスリン抵抗性、脂質異常症などの、生活習慣病のサインが多く見られる」傾向がありました。
また、「肥満グループのなかで、腸内細菌の数と種類が少ない人たちは、体重が増えやすい」傾向も見られました。
(根拠論文:Richness of human gut microbiome correlates with metabolic markers)
2016年に3,666名の双子の英国人を対象に、遺伝と肥満について調べた研究では、腸内細菌の種類が少ないことは、肥満や内蔵脂肪の多さと関係性がありました。
(根拠論文:Heritable components of the human fecal microbiome are associated with visceral fat)
このように、腸内細菌の種類が少ないと、太りやすい傾向がみられます。
食物繊維(水溶性)は、腸内細菌のエサ(プレバイオティクス)になることで、腸内細菌を増やす働きがあります。この点でも、食物繊維はダイエットに効果的だと考えられます。(根拠論文:Interactions and competition within the microbial community of the human colon: links between diet and health)
なぜ腸内細菌が増えると、ダイエットに効果的なのか?
腸内細菌がダイエットに効果的な理由の1つに「短鎖脂肪酸」があります。短鎖脂肪酸は、食物繊維(水溶性)によって腸内細菌を増えるときにつくられます。
短鎖脂肪酸には「体脂肪が燃えやすくなり、また、体脂肪が蓄積されにくくなる働きがある」と考えられています。
(根拠論文:The role of short-chain fatty acids in the interplay between diet, gut microbiota, and host energy metabolism)
このメカニズムはまだ厳密には解明されていないのですが、実際、多くの研究で「短鎖脂肪酸は肥満や内臓脂肪のリスクを減らす」ことが確認されています。(根拠論文1、根拠論文2)
また、腸内細菌がダイエットに効果的なもう1つの理由は、腸内細菌と短鎖脂肪酸には、体内の「炎症」をおさえる働きがあることです。
炎症とは、簡単にいえば、病原体やケガ、ストレスなどに対して、身体が回復しようとする反応のことです。たとえば、ケガをして、赤く腫れるのは炎症です。
炎症は、カラダに必要で自然な反応です。しかし、炎症が数ヶ月や数年続くような「慢性的な炎症」になると、さまざまな病気の原因になります。
そして、「慢性的な炎症は、体重増加や肥満に関係がある」ことが多くの研究からわかっています。(根拠論文1、根拠論文2、根拠論文3)
実際、次のような実証研究があります。
2006年ハーバード大学による、902名の糖尿病女性を対象にした研究では、「食物繊維を多く食べると炎症を減らす」ことが確認されています。
(根拠論文:Whole-grain, bran, and cereal fiber intakes and markers of systemic inflammation in diabetic women)
2008年マサチューセッツ・メディカル・スクール大学の研究でも、1,958名の閉経後の女性を調べて、「食物繊維を多く食べると炎症を減らす」ことが確認されています。
このように、食物繊維によって腸内細菌が増えることは、短鎖脂肪酸や炎症に影響を与えて、肥満や体重増加を防ぐように働きます。
なお、腸内細菌のダイエット効果については、まだ研究が十分ではなく、決定的とはいえません。とはいえ、その効果はおそらく高いと考えられ、さらなる研究が期待されている分野です。
- 食物繊維は食欲を満たすことで、余計なカロリー摂取を防ぐ
- 食物繊維は糖質の吸収をゆるやかにして、太りにくくする
- 食物繊維は腸内細菌を増やし、短鎖脂肪酸をつくることで、体脂肪を燃えやすくする。また、炎症をおさえて、肥満や体重増加を防ぐ
食物繊維が豊富なダイエットにおすすめ食材
食物繊維が豊富なおすすめ食材は次のとおりです。
- 野菜・きのこ・海藻
- 茶色い炭水化物
- 果物
- ナッツ類・豆類
なお、ダイエットに効果的なのは「水溶性の食物繊維」です。一方で「不溶性の食物繊維」は水に溶けないので、腸に長く留まらずに通過することで、便秘を解消する働きをします。(根拠論文:Stopping or reducing dietary fiber intake reduces constipation and its associated symptoms)
つまり、両方ともカラダに必要ということです。ほとんどの植物性食品には、水溶性と不溶性の食物繊維が両方とも含まれています。なので、何か特定の食品に偏って食べるというよりは、たくさんの種類の植物性食品を、バランス良く食べるのが大切です。(参考:健康長寿ネット 食物繊維の働きと1日の摂取量)
野菜・きのこ・海藻
野菜・きのこ・海藻を食べることは、ダイエットの基本中の基本です。
厚生労働省は、「野菜を1日350g以上」食べることを推奨しています。(参考:厚生労働省 e-ヘルスネット 野菜、食べていますか?)
野菜350gといえば、お皿に換算すると4~5皿程度です。
野菜がダイエットに大切なことは誰でも知っています。ですが、1日350gの野菜を食べれている人は、ほとんどいないのではないでしょうか?
きのこ・海藻も合わせて、かなり意識して食べる必要があります。
茶色い炭水化物
主食である炭水化物は、毎日食べるものなので、何から食べるかはダイエットに大きく影響します。できれば、「白い炭水化物」を「茶色い炭水化物」に置き換えましょう。
白米や食パンなどの「白い炭水化物」は、精製されたものなので、食物繊維をあまり含んでいません。
一方で、玄米や全粒粉パン、ライ麦パン、オートミールなどの「茶色い炭水化物」は、精製される前の状態なので、食物繊維を豊富に含んでいます。
2008年イギリスの研究によれば、茶色い炭水化物とダイエットに関する15個の論文(合計119,829名が対象)を、まとめて詳しく分析したところ、「茶色い炭水化物を食べる量が多い人は、そうでない人と比べて、BMIが低く、お腹まわりも細い」ことが確認されています。
(根拠論文:Whole-grain intake as a marker of healthy body weight and adiposity)
全粒粉のパンでは「ベースブレッド」がおすすめです。美味しくて、食べごたえがあり、ダイエットを楽にしてくれます。
オートミールのダイエット効果はこちらの記事を参考にしてみてください。
果物
果物も食物繊維が豊富です。
厚生労働省は、「果物を1日200g以上」食べることを推奨しています。(参考:農林水産省 食事バランスガイド早わかり)
たとえば、目安として、りんご1個で約200~300g、みかん2個で約200gです。
お菓子を食べる習慣がある人は、代わり果物を食べるのがおすすめです。野菜と同じように、いろんなの種類の果物を食べましょう。
ナッツ類・豆類
ナッツや豆類も食物繊維が豊富です。
また、ダイエットにはたんぱく質が不可欠ですが、ナッツや豆類は良質なたんぱく源でもあります。
実際、多くの研究において「ナッツを習慣的に食べる人は、そうでない人と比べて健康的で、肥満になりにくい」ことが報告されています。(根拠論文:Long-term associations of nut consumption with body weight and obesity)
アーモンドやくるみが入った無塩素焼きのミックスナッツ、豆類ではいんげん豆や納豆がおすすめです。
ナッツのダイエット効果はこちらの記事を参考にしてみてください。
食物繊維の1日の推奨摂取量
厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」では、食物繊維の目標量は、次のように定められています。
食物繊維の1日摂取量 | 男性 | 女性 |
年齢 | 目標量/1日 | 目標量/1日 |
0~2歳 | ー | ー |
3~5歳 | 8g以上 | 8g以上 |
6~7歳 | 10g以上 | 10g以上 |
8~9歳 | 11g以上 | 11g以上 |
10~11歳 | 13g以上 | 13g以上 |
12~14歳 | 17g以上 | 17g以上 |
15~17歳 | 19g以上 | 18g以上 |
18~29歳 | 21g以上 | 18g以上 |
30~49歳 | 21g以上 | 18g以上 |
50~64歳 | 21g以上 | 18g以上 |
65~74歳 | 20g以上 | 17g以上 |
75歳以上 | 20g以上 | 17g以上 |
妊婦 | ー | 18g以上 |
授乳婦 | ー | 18g以上 |
(引用:日本人の食事摂取基準)
成人の目標量は「男性で21g/日、女性で18g/日」です。しかし、2018年の「国民健康・栄養調査」によると、成人の食物繊維の摂取量は平均15g/日と足りていませんでした。(参考:厚生労働省 平成30年 国民健康・栄養調査結果の概要)
このように、食物繊維は不足しがちです。ふつうの食事では食物繊維を過剰摂取する心配はありませんので、意識して積極的にとることが大切です。
まとめ
食物繊維を多く含む食品は、食欲を満たして、食べすぎを防いでくれます。また、糖質の吸収をゆるやかになり、太りにくくなります。さらに、腸内細菌を増やすことでダイエットをサポートしてくれます。
このように多くのメリットを持つ食物繊維ですが、ふだんの食生活では意外と不足しがちです。
ぜひ、意識して食物繊維を増やしてみてください。きっとダイエットに良い影響がでるはずです。
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