この記事でお答えする疑問
- ダイエット中にお酒を飲むと、痩せにくくなるのはなぜ?
- どれくらいなら飲んでもダイエットできる?
- どんなお酒なら太りにくい?
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「酒は百薬の長」といわれ、適量飲むことは健康に良いことを示す研究があります。(根拠論文:AHA Science Advisory: Wine and your heart: a science advisory for healthcare professionals from the Nutrition Committee, Council on Epidemiology and Prevention, and Council on Cardiovascular Nursing of the American Heart Association)
一方で、お酒は少量でも健康に悪いとする研究もあります。なので、一概に良い悪いは言えません。(根拠論文:Alcohol use and burden for 195 countries and territories, 1990-2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016)
ダイエットではどうでしょうか?
ダイエットに限っていえば、アルコールを飲むと残念ながら痩せにくくなります。
最近だと、「糖質を含まないお酒はいくら飲んでも太らない」といった主張がありますが、一概に正しいとはいえません。
ダイエット中はお酒は控えめにするのが望ましいです。とはいえ、まったく飲んではいけないわけではありません。上手に飲めば、ダイエットをしながらでもお酒を楽しむことはできます。
この記事では「お酒では痩せない7つの理由」と「太りにくいお酒の飲み方」について解説しました。
お酒の習慣の見直しに役立ててもらえれば幸いです。
お酒で痩せない7つの理由
お酒で痩せない理由として、次の7つが挙げられます。
- アルコールにはエンプティーカロリーがある
- アルコールは優先的にエネルギーとして使われる
- アルコールは肝臓の働きを妨げる
- アルコールは食欲を増進させる
- アルコールはテストステロンを下げる
- アルコールは睡眠の質を悪くする
- お酒の糖質で太りやすくなる
それぞれ解説していきます。
アルコールにはエンプティーカロリーがある
アルコール飲料にはカロリーがあるのですが、栄養素をほとんど含まないのでエンプティー(空の)カロリーと呼ばれます。
なお、エンプティーカロリーだから太らないというのは大きな間違いです。
栄養素をほぼ含まないだけで、カロリーはカロリーです。エネルギーとして消費され、余れば体脂肪になります。
たとえば、缶ビール1本(350ml)には137kcal、日本酒1合(180ml)には191kcalのカロリーが含まれています。
ジョギング30分で約240kcalを消費することを考えると、アルコール飲料にはそれなりのカロリーが含まれていることがわかります。
アルコールは優先的にエネルギーとして使われる
じつはアルコールは、他の栄養素よりも優先的にエネルギーとして使われることがわかっています。(根拠論文:Increased brain uptake and oxidation of acetate in heavy drinkers)
アルコールがエネルギーとして燃えているあいだは、主要なエネルギーである糖質(グルコース)や脂質はあまり使われません。余ったエネルギーは体脂肪として蓄積されることになります。
アルコールは肝臓の働きを妨げる
カラダにはいったアルコールは肝臓で解毒されます。一方で肝臓は、糖質や脂質、たんぱく質の代謝のためにも働きます。
アルコールの飲みすぎると、肝臓はアルコールの解毒に追われてしまい、栄養素を代謝する働きが妨げられて、体重が落ちにくくなると考えられます。
これに関係して、アルコールの飲みすぎは脂肪肝を引き起こす原因になります。脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪がたまった状態のことです。(参考:厚生労働省 e-ヘルスネット 脂肪肝)
アルコールは食欲を増進させる
アルコールには、消化酵素の分泌を増やしたり、胃の血流を良くして消化運動を活発にする働きがあるので、食欲を増進させます。(参考:厚生労働省 e-ヘルスネット アルコールの消化管への影響)
食べすぎにつながりますので、当然太りやすくなります。
アルコールはテストステロンを下げる
アルコールはテストステロンというホルモンの分泌を下げることがわかっています。(根拠論文:Alcohol’s effects on male reproduction)
テストステロンには、筋肉の合成や脂肪を燃焼させる働きがあります。テストステロンが下がると、これらの働きが妨げられるので、体重が落ちにくくなります。
実際、2009年に報告されたドイツの研究で、480名の男性を約5年間追いかけて調査した結果、「テストステロンの低さとメタボリックシンドローム*の発生には相関関係がある」ことが確認されています。(根拠論文:Prediction of metabolic syndrome by low serum testosterone levels in men: results from the study of health in Pomerania)
*メタボリックシンドローム(通称:メタボ)とは、お腹まわりの脂肪蓄積に加えて、高血圧、高血糖、脂質代謝異常のどれか2つ以上に当てはまる状態のことです。(参考:厚生労働省 e-ヘルスネット メタボリックシンドロームの診断基準)
アルコールは睡眠の質を悪くする
アルコールは睡眠の質を悪くすることがわかっています。(根拠論文:Sleep, sleepiness, and alcohol use)
睡眠の質が悪くなると、空腹感や満腹感、エネルギー消費に関係するホルモンのバランスが崩れるため、日中の食事量が増えやすくなります。(根拠論文:Impact of insufficient sleep on total daily energy expenditure, food intake, and weight gain)
お酒の糖質で太りやすくなる
お酒は種類によっては糖質を多く含むので、とりすぎると太りやすいです。
糖質で太るメカニズムは、次のとおりです。
糖質のとりすぎ → 血糖値が急に上がる → インスリンが分泌(すい臓) → 血糖(ブドウ糖)がカラダに取り込まれる → 血糖値が下がる → 余ったブドウ糖は体脂肪になる
(参考:厚生労働省 e-ヘルスネット インスリン)
キーワードは「血糖値」と「インスリン」です。インスリンは別名で「肥満ホルモン」と呼ばれることがあります。
お酒に含まれる糖質には「糖類」が多いです。糖類とは、糖質のなかでも「小さな糖」のことで、すぐに消化吸収されやすいので、血糖値を上げやすい特徴があります。
太りにくいお酒の飲み方
それでは、太りにくいお酒の飲み方をみていきます。
お酒を飲むなら適量にとどめる
ダイエット中であれば、飲まないに越したことはありません。もし飲むのであれば適量にとどめるようにしましょう。
厚生労働省では適度な飲酒として「1日平均純アルコールで20g程度」と定めています。おおむね次のような量です。
- ビール中瓶 1本
- 日本酒 1合
- チューハイ(7%) 1缶(350ml)
- ワイン 1.5杯 程度
この数値は日本人や欧米人を対象にした大規模な研究から、アルコール消費量と総死亡率の関係を検討し、それを根拠に割り出されたものです。(参考:厚生労働省 e-ヘルスネット 飲酒のガイドライン)
「だいたい1~2杯が適量」と考えておけばわかりやすいでしょう。
糖質の低いお酒を飲む
『お酒で痩せない7つの理由』で解説のとおり、お酒の糖質は太りやすいです。なので、ダイエット中は「1日のお酒の糖質量を10gまで」におさえるようにしたいところです。
下の表に、主なお酒の糖質量をまとめました。
お酒の種類 | 量 | 糖質量 |
梅酒 | 100ml | 21.5g |
カクテル | 350ml(1缶) | 19.3g ※1 |
ビール | 350ml(1缶) | 10.9g |
チューハイ(レモン) | 350ml(1缶) | 9.8g |
日本酒 | 180ml(1合) | 8.8g |
ビール(糖質オフ) | 350ml(1缶) | ~8.7g ※2 |
ロゼワイン | 80ml(グラス1杯) | 3.2g |
ビール(糖質ゼロ) | 350ml(1缶) | ~1.7g ※3 |
白ワイン | 80ml(グラス1杯) | 1.6g |
赤ワイン | 80ml(グラス1杯) | 1.2g |
ジン | 100ml | 0.1g |
ラム | 100ml | 0.1g |
焼酎 | 100ml | 0g |
ウイスキー | 20ml | 0g |
ブランデー | 100ml | 0g |
ウォッカ | 100ml | 0g |
※1 カクテルとは、簡単に言えばジュースなどをお酒で割ったものです。何を割るかで糖質量は大きく変わります。糖質量については、文部科学省の食品成分データベース以外の情報を参考にしています。
※2 糖質オフとは、100mlあたりの糖質量が2.5g以下のもの(食品表示法)
※3 糖質ゼロとは、100mlあたりの糖質量が0.5g以下のもの(食品表示法)
(参考:文部科学省 食品成分データベース)
(参考:消費者庁 食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン)
太りやすいお酒
梅酒、カクテルは太りやすい
梅酒・カクテルは、高糖質なので、ダイエット中はおすすめできません。
- 梅酒 糖質21.5g/100ml
- カクテル 糖質19.3g/350ml(1缶)
両方とも甘くするために、糖類(砂糖など)がたくさん含まれています。血糖値をあげてしまうので、ダイエット中は避けるようにしましょう。
ビール、チューハイ、日本酒は注意して飲む
ビール・チューハイ(レモン)・日本酒も、それなりに糖質を含むので、積極的にはおすすめできません。ただし、1缶(または1合)をたまに飲むぐらいならOKでしょう。
- ビール 糖質10.9g/350ml(1缶)
- チューハイ(レモン) 糖質9.8g/350ml(1缶)
- 日本酒 糖質8.8g/180ml(1合)
ただし、チューハイは商品によって糖質量がもっと高いものもあります。買う前に、かならず糖質量をチェックしましょう。
太りにくいお酒
糖質ゼロビール
ビールが好きであれば、糖質「ゼロ」のビールを選ぶのがよいです。
- ビール(糖質オフ) 糖質~8.7g/350ml(1缶)
- ビール(糖質ゼロ) 糖質~1.7g/350ml(1缶)
ちなみに、糖質「オフ」や「ゼロ」でも、少しは糖質が含まれています。(食品表示法では、100mlあたり糖質0.5g以下で「糖質ゼロ」、糖質2.5g以下で「糖質オフ」と表示できるため。)
糖質「オフ」でもOKですが、やや糖質量が高くなるので注意はしましょう。
辛口ワイン
ワインは低糖質なので、ダイエット中でもおすすめです。
- ロゼワイン 糖質3.2g/80ml(グラス1杯)
- 白ワイン 糖質1.6g/80ml(グラス1杯)
- 赤ワイン 糖質1.2g/80ml(グラス1杯)
実際に、「飲酒と体重の関係」について、デンマーク人の青年720名を、約20年間にわたって追いかけた研究では、ワインの飲酒は体重の増加をおさえることが確認されています。2019年に『Nutrition Journal』で報告されました。 (根拠論文:Adolescent wine consumption is inversely associated with long-term weight gain: results from follow-up of 20 or 22 years)
ほかにも「ワインのダイエット効果」を調べた研究があります。2004年に『International Journal of Obesity』で報告されました。
この研究では、ドイツ人40名を対象に、食事を一定のカロリー量にコントロールして、そのカロリーの10%を「20名は白ワイン」か「別の20名はぶどうジュース」に置きかえて、3ヶ月間の体重の変化を調べました。
結果は、両方で体重は落ちたのですが、「白ワイン」の方が26.1%大きく体重が減りました。
(根拠論文:Effects of moderate consumption of white wine on weight loss in overweight and obese subjects)
このように、適量のワインであれば太りにくいと期待してよさそうです。
糖質量の少ない辛口ワインがおすすめです。また、普通のワインでもいいですが、より品質の高いオーガニックワインを選ぶのもよいでしょう。
蒸留酒
蒸留酒は、糖質量がほとんどゼロなので、ダイエットにおすすめです。
- ジン 糖質0.1g/100ml
- ラム 糖質0.1g/100ml
- 焼酎 糖質0g/100ml
- ウイスキー 糖質0g/20ml
- ブランデー 糖質0g/100ml
ウイスキーをソーダで割ったハイボールは飲みやすいのでおすすめです。
まとめ
お酒で痩せない7つの理由は、次のとおりです。
- アルコールにはエンプティーカロリーがある
- アルコールは優先的にエネルギーとして使われる
- アルコールは肝臓の働きを妨げる
- アルコールは食欲を増進させる
- アルコールはテストステロンを下げる
- アルコールは睡眠の質を悪くする
- お酒の糖質で太りやすくなる
ダイエット中にお酒は避けるのが望ましいですが、飲んだらダメというわけではありません。太りにくいお酒を適量(1~2杯まで)、上手に飲んで、バランスのとれた食生活をおくりましょう。
お読みいただき、ありがとうございました!
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